民法改正(所有者不明土地関連)④~相続制度(遺産分割)の見直し~

近年、問題視されている所有者が不明の土地の面積は、関東面積の約2.5倍、埼玉県約22個分で、国土の約22%にもなります。このような管理されずに放置された所有者不明の土地は、周辺の環境や治安の悪化を招いたり、防災対策や開発などの妨げになっています。そこで、こうした所有者不明土地をなくすため、令和3年4月に、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、現行民放の規律の一部が改正され、今年、令和5年4月1日から適用されています。

 所有者不明土地に関連する下記4つの主な改正項目について要点をお伝えできればと思います。

 

 1.相隣関係の見直し

 2.共有の見直し

 3.財産管理制度の見直し

 4.相続制度(遺産分割)の見直し

今回は 4.相続制度(遺産分割)の見直し についてお伝えいたします。


 遺産分割とは?

 亡くなった方(被相続人)の遺産を法律で決められた相続人が全員で協議して

相続財産の分け方を決定することです。なお、遺産分割の際は、法定相続分を基準にしつつ、

具体的な相続分(個別の事情:特別受益寄与分など)を考慮して算定することが一般的です。

 

 所有者不明土地の中には亡くなった方(被相続人)の遺産が、遺産分割がなされないまま

長期間経過し、相続が繰り返し発生して、多数の共同相続人による共有状態となってしまうなど

遺産における管理や処分が困難になり放置されているものも数多くあります。
 そこで、遺産分割がなされず、相続財産が長期間放置されるケースを解消するため、相続開始から

10年をひとつの契機として、遺産分割を促進する仕組みが新たに設けられました。

○今回の改正内容
  相続開始時から10年が経過した後に行われる遺産分割協議については、原則として個別の事情

(特別受益や寄与分など)は考慮されず、法定相続分または指定相続分によって、一律に行われる。
 ※改正民法の施行日(令和5年4月1日)以前に開始された相続についても適用されますが、以下の
 ケースのように、改正民法の施行日から5年間の猶予期間が設けられています。

①改正民法の施行日の時点で、相続開始時から既に10年が経過している場合

②相続開始時から10年を経過する時点が、5年間の猶予期間以前の場合
  改正民法の施行日から5年以内であれば、特別受益および寄与分に関する権利を主張すること

  ができます。

③相続開始時から10年を経過する時点が、5年間の猶予期間以後の場合
  改正民法の施行日から10年以内であれば、特別受益および寄与分に関する権利を主張すること

  ができます

  ※特別受益とは、相続人の中に、被相続人(亡くなられた方)から財産を贈られるなど

  特別の利益を受けた者(特別受益者)がある場合に、その相続人の受けた利益のことをいいます。

  公平な遺産分割を実現するために、特別受益は、相続開始のときに実際に残されていた

  相続財産の額と合算したうえで、各相続人の相続分を決めなければならないと定められていま

 (特別受益の持ち戻し)

  ※寄与分とは、被相続人(亡くなられた方)の財産の維持や増加に貢献した場合(財産
    の援助や療養看護等)に、他の共同相続人よりも上乗せして被相続人(亡くなられた方)の財産を

  相続させることによって、共同相続人同士の公平さを図る制度のことです。

詳細は、

法務省公式ホームページ

「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」

https://www.moj.go.jp/content/001396638.pdf

のP43~P50をご確認ください。

  

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